SHARE:

twitter

「吉澤嘉代子の日比谷野外音楽堂」オフィシャルライブレポート

2021.06.21 UP LIVE

文:金子厚武
写真:山川哲矢
衣装:田中大資
ヘアメイク:扇本尚幸

6月20日、吉澤嘉代子が単独公演『吉澤嘉代子の日比谷野外音楽堂』を開催した。日比谷野音は吉澤が高校生の頃にサンボマスターのライブを観て、舞台の向こう側に行くことを決心し、「いつか私もここで歌いたい」と夢に見てきた大切な場所。昨年は緊急事態宣言の発令により中止となってしまったが、一年越しに夢を叶えるメモリアルなライブとなった。

ステージ中央に木をモチーフにした大きなオブジェが置かれている中、まずは吉澤が一人で姿を現し、弾き語りで“東京絶景”を披露。東京の都心にたたずみ、ビルと緑の木々に囲まれた音楽の聖地・日比谷野音らしい一曲目だと言える。この曲を丁寧に歌い終え、お辞儀をすると、バンドメンバーとともに、吉澤のライブではお馴染みの愛犬・ウィンディも登場。「いよいよ夢が叶うね」と会話を交わし、「吉澤嘉代子の日比谷野外音楽堂、はじまります!」と宣言すると、アップテンポの“ユートピア”で本格的な幕開けを飾った。


この日はバンドマスターのゴンドウトモヒコ、キーボードの伊澤一葉、ギターの君島大空、ベースの伊賀航、ドラムの伊藤大地に、サックス、フルート、クラリネットの武嶋聡、ヴァイオリンの高原久実、コーラスの加藤哉子を加えた特別編成。管弦楽器の豊かな音色とともに“月曜日戦争”や“怪盗メタモルフォーゼ”が演奏され、“鬼”では振り付けでキュートな魅力を振りまき、“恥ずかしい”では君島のソロをフィーチャーしたりと、吉澤とバンドが一体となってステージを作り上げて行く。


心配された雨も降ることなく、「晴れました!」と上機嫌の吉澤は、メンバー紹介に続いて、「みんなで素敵な夜を過ごしましょう!」と呼びかけ、ホーンセクションがファンキーな“麻婆”でノリノリに。かと思えば、“えらばれし子供たちの密話”でスキルフルなフェイクを決め、エレピの音色が特徴的な“サービスエリア”をムーディーに歌い上げる。そして、こちらもライブではお馴染みの寸劇を伊澤と行って始まった“地獄タクシー”では、場内から自然と手拍子が起こり、大きな盛り上がりを見せた。
ここで一息ついて、吉澤がステージ上に置かれた椅子に座り、朗読を始めると、バンドメンバーは効果音を出して、不思議なムードを作り出す。このとき読まれていたのは彼女がファンを公言するいしいしんじの小説『ぶらんこ乗り』に登場する姉弟の弟が書いた『手を握ろう!』というお話。


そして、そのままこの小説をモチーフにした“ぶらんこ乗り”がアコーディオンの演奏とともに歌われ、“ルシファー”、“刺繍”と今年リリースされた最新作『赤星青星』の中からの楽曲を続けると、代表曲のひとつ“残ってる”を披露。管弦楽器を交えた演奏はこの曲の美しさとせつなさをさらに引き立て、ゴンドウによるフリューゲルホルンのソロも実に味わい深かった。


吉澤は「幸せだなあ」とポツリとつぶやき、「人前に出るのが得意じゃない自分がこんな風に歌っているのは、いつかこの場所で歌いたいと思っていたから」と話すと、ウィンディが隠し持っていた手紙を読み、「ここに連れてきてくれて本当にありがとう」と伝える。ここからは“movie”、“泣き虫ジュゴン”、“ストッキング”と、吉澤自身の心象風景とリンクする初期の名曲が続けて披露され、特に“泣き虫ジュゴン”は、日が少しずつ暮れ、歌詞通りの海の中にいるような感覚になる中、情感たっぷりの歌が非常に素晴らしかった。


そして、「最後に歌おうとずっと思っていた曲をやります」と言って演奏されたのは、サンボマスターの山口隆が作詞作曲を手掛けた“ものがたりは今日はじまるの”。曲調も、パフォーマンスも、実に晴れやかな雰囲気の中で、本編が終了した。


すっかり日が暮れ、夜の闇に包まれたアンコールで吉澤は「マイナスをどうやってフラットに戻すかを考えるようになって、『夢』という言葉をあまり聞かなくなった時代に、自分の夢を叶えることに対して不安もありました」と告白し、「でも、私の大好きな曲を詰め込んで、リハーサルをしていくうちに、過去の自分と何度も出会って、私が歌を歌う理由は、自分が子供だった頃のような子供に向けて歌うことだっていう気持ちをもう一度思い出せたので、これからの自分にとっても大切な一日になりました」と語る。

さらには、この日のテーマが「箱庭」で、曲を作るときの心の部屋にみんなを呼んだということ、せっかくの野音だからなるべく生演奏でライブをやりたくて、いろんな楽器を持ち替えながら演奏してもらったこと、普段のライブは誰かを演じるけど、この日はありのままの自分で出て行きたいと思ったこと、そして、日比谷野音で観たサンボマスターの山口が「3000人に歌うんじゃなくて、あなたに歌いに来たんです」と言ったのを聞いて、「私も一人の人に歌いたいと思った」と、野音に向けての気持ちを切々と伝えていく。

すると、「もうひとつ、叶えたいことがあるんです」と言って、ステージを下り、客席の中心部へと移動。「ここで歌ってもいいですか?」と言って、弾き語りで披露されたのは、17歳の頃に書いた曲だという“みどりの月”。周りをグルッとお客さんに囲まれて、緑の照明に照らされる中、昔の曲を当時のままに歌い上げ、この日のハイライトとなった。

 

ステージに戻り、バンドメンバーにも夢について聞き、ゴンドウから「このメンバーで武道館でやりたい」という発言も飛び出す中、「最後にもう一曲、歌いたい歌があるので聴いてください」と言って、“雪”を演奏。高校時代に一緒に日比谷野音に行った大切な友達に送られた曲を歌い切ると、この日がウィンディの誕生日であることも告げられて、吉澤とウィンディがお互いに「おめでとう」を言い合いながら、大切な一日が幕を閉じた。


「吉澤嘉代子の日比谷野外音楽堂」
■2021年6月20日(日)
■日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)
■バンドメンバー
ゴンドウトモヒコ(Bandmaster, Horns, Sequence)
伊澤一葉(Keyboard)
君島大空(Guitar)
伊賀航(Bass)
伊藤大地(Drums)
武嶋聡(Sax, Flute, Clarinet)
高原久実(Violin)
加藤哉子(Chorus)

初のBlu-ray作品「吉澤嘉代子の日比谷野外音楽堂」発売決定。
情報はこちら

PAGE TOP