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「すなっく嘉代子の忘年会」ライブレポート(文:神保未来)

2022.12.22 UPLIVE

文:神保未来
写真:濱田英明
衣装:田中大資
ヘアメイク:扇本尚幸



吉澤嘉代子が、2022年12月21日(水)東京キネマ倶楽部にて単独公演《すなっく嘉代子の忘年会》を開催。もともとライブ内のワンコーナーとして行われていた本企画は、2020年の無観客配信を機に現在のスタイルに発展。吉澤がスナックのママに扮してトークやライブ演奏を行うというイベントだ。なお彼女のワンマン公演は2021年6月《吉澤嘉代子の日比谷野外音楽堂》以来1年半ぶりで、チケットは即完売。二階立見席まで多くのファンが集まった。

会場が暗転するとドアが開く音が聞こえ、ステージ上のカウンターに愛犬ウィンディ(人形操演:山田はるか)が登場。ウィンディがステッキを振ると看板が点灯し、すなっく嘉代子が“開店”する。ところが、肝心の吉澤の姿が見当たらない。そこで置き手紙を開くと、色っぽい声で「慌ただしく過ぎた2022年の労をそっとねぎらう宴になりますよう心ここにお待ちしております」と、嘉代子ママから観客への手紙が読まれる。



そしてカラオケ音源が流れ出し、サブステージから吉澤が登場。金色のドレスにフェザーのストール、大きな蝶の髪飾りを身につけたゴージャスな出で立ちで、昭和ムード歌謡の名曲「グッド・ナイト」(和田弘とマヒナスターズ&松尾和子)を歌いながら階段を降りていく。
メインステージに到着すると「大変長らくお待たせしました。すなっく嘉代子の忘年会にようこそ! ママの嘉代子です。今日はご来店いただきありがとうございます」と挨拶。過去3回の《すなっく嘉代子》にも出演した君島大空(Gt)、初共演となる梅井美咲(Piano)という2名のミュージシャンを呼び込む。

ライブパートは三部構成で、第一部は「月曜日戦争」でスタート。仕事や学校など日常の戦いについて歌ったこの曲は、観客の一年の頑張りを労わってくれるかのよう。続いて好きな人からの電話を待つ心境について描いた「らりるれりん」を歌ったのち、電話のベルが鳴る。電話を取った彼女は受話器(型のマイク)を持ったまま「リダイヤル」を歌唱。梅井によるグランドピアノの演奏が楽曲を鮮やかに彩っていて、そこに君島の情熱的なギターの調べが合わさり重層的なアンサンブルが生まれていく。



普段から楽曲の主人公が憑依したかのようなパフォーマンスで魅せる吉澤だが、ゲスト2人の自由で解放的なプレイに感化されたためか、この日はいつにも増して表現に熱がこもっていた。たとえば「鬼」の〈ぐっとぐっと食縛って〉というフレーズでは歯を食いしばる仕草を見せて嫉妬心をむき出しにし、君島とデュエットした「洋梨」でも感情表現がより豊かに。彼女自身も「リハーサルよりもリラックスして楽しい。お二人とウィンディ、みんなのおかげ!」と生き生きと語っていた。

ここでウィンディから、忘年会の思い出について質問が飛ぶ。君島は3年前に酔いすぎた友人を叱ってしまったというエピソードを語り、現在20歳の梅井は今回が初の忘年会かつ初スナックであることを明かす。吉澤は「子供の頃、家族みんなでビンゴをしてて、ウィンディがウトウトしていた横顔を思い出すなあ」と懐古。すかさずウィンディが「忘年会といえばビンゴだよね! ぼく、みんなとビンゴ大会をやりたかったんだ!」と誘導する。

観客には入場時にビンゴカードが配られており、君島・梅井を含む会場の数百人による大ビンゴ大会が開催。ビンゴとなった参加者には、吉澤の私物ピックケースや指輪、ぬいぐるみ等のプレゼントが振る舞われた。

15分間の休憩を挟み、ライブは第二部へ。再びサブステージに現れた吉澤は、黒と赤を基調にしたチャイナドレスに衣装チェンジ。時は忘年会開始前に戻っていて、彼女は道中で迷子になってしまったらしく、ひどく慌てた様子だ。運転手に扮する君島に声をかけられタクシーに乗り込んだが、その行き先は“シーラカンス通りの地獄前”。そしてジャズ調にアレンジされた「地獄タクシー」から「シーラカンス通り」へなだれ込んでいく。アコースティックギターを激しくかき鳴らす吉澤、鬼気迫る表情を見せ重厚なタッチでピアノを奏でる梅井、緊張感を煽るようにタイトなギターサウンドを響かせる君島。ヒリヒリとした空気に観客は息をのむ。



一方「えらばれし子供たちの密話」では、伸びやかなグルーヴに乗せて吉澤が気持ちよさそうに歌唱。柔らかなサウンドで披露した「グミ」では、吉澤が歌いながら声を震わせる場面も。切々とした彼女の歌は憂いと儚さを帯びていて、観客の感情を揺さぶる。ラストは羽扇子を手にしっとりと「ニュー香港」を歌い上げ、本編を締めくくった。

第三部となるアンコールでは、吉澤が白いドレスを身にまとって登場。すなっく嘉代子の醍醐味といえばカバー演奏で、この日はSPEEDの「White Love」を緩急をつけた歌い口で披露する。さらに君島がエフェクターなどを駆使して幻想的な空間を創出する中「ルシファー」「刺繍」を演奏したのち、最後は未発売の楽曲「抱きしめたいの」。吉澤が優しく鳴らすアコギと、君島がつま弾く温かなエレキギターの音色、そして梅井の流麗なピアノが響きあう。

「まだまだ不安な時代に、こうしてお集まりいただいて本当にありがとうございます。素晴らしいミュージシャンと、犬と、お客様に出会えていることは奇跡のようだなと思います。私の宝物です」と感謝の気持ちを伝え、ウィンディを抱っこしてステージをあとにする。
しかし「みんなの顔を焼きつけて帰りたい」と再登場し、ダブルアンコールとして完成したばかりの新曲を初披露。恋の甘さや痛みを赤裸々に歌ったラブソングで、これまでの彼女の作品にも通ずるような世界観や歌詞のフレーズが散りばめられている。タイトルはまだ秘密だそうだが、「とっておきのタイトルをつけました」とのことなので、続報に期待したい。



さらに吉澤は、2023年5月9日(火)EXシアター六本木にて単独公演を行うことを発表。「みなさんに会えるのをご褒美にしながら、5月まで曲を作って頑張りたいと思います。またお会いしましょう」と締めくくる。ライブや新曲など2023年以降の大きな楽しみをたくさん残して、忘年会は大団円を迎えた。


セットリスト
1.グッド・ナイト(和田弘とマヒナスターズ&松尾和子)
2.月曜日戦争
3.らりるれりん
4.リダイヤル
5.鬼
6.洋梨
7.地獄タクシー
8.シーラカンス通り
9.えらばれし子供たちの密話
10.グミ
11.ニュー香港

アンコール
12.White Love(SPEED)
13.ルシファー
14.刺繍
15.抱きしめたいの(未発表)
16.新曲(未発表)

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